私がオーストラリアにいた頃から、この国の人たちはとにかくビールが大好きだ。今では日本同様、若い人はそれほどビールを飲まなくなったらしいが、当時は友人の結婚式やパーティとなると、招待客は皆、「自分はこの分を最低限飲みます」とばかりに、「カートン」と呼ばれる24本入りの段ボールパックを抱えてやってくる。そして、会場のバスタブに氷を敷き詰め、キンキンに冷やしたそれを、これでもかと言うほど煽る。
　当然のように、オーストラリアの街にもパブが溢れている。大都会のシドニーとなると日本の居酒屋のように林立し、平日、休日問わず大勢の客で賑わう。
　彼らは大好きなビールでのどを潤し、そして、オーストラリアン・ミートパイを胃袋に流し込む。角切りやミンチにされたオージービーフ、店舗によってはチキンやラム肉もあるそうだが、グレービー・ソースとともにパイ生地に包んで焼き上げたこの国のソウルフードは、圧倒的なボリュームを誇示する。
　ビールとミートパイ。この組み合わせはオーストラリア人の定番であり、食欲を満たすには十分すぎるほどだが、彼らの欲を最も満たしてくれるのはいつだってラグビーだ。

> to be continued

photo：Jun Ikeda