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#04
台湾野球のレベルの
高さにスタジアムの
可能性を感じた

 内野の観客席はダブルデッキとなっていて、シートもそれなりにそろっているし、VIPルームも設けてあるが、それだけだ。フィールドに目を移しても、一見、天然芝が映えているように感じるが、目を凝らしてみると芝はしっかりと生えそろっておらず、グラウンドも場所によってはデコボコしている。ライト方向には大型ビジョンが設置されているが画質が粗い。選手たちを応援するチアガールの踊りも、どこか足並みがそろっていないように感じる。
 全体として悪くはないのだが、一つひとつをくまなく見ていくとこだわりがなく、体裁を整えているように思えてならなかった。
 なにより、観客が圧倒的に少なかった。1万人以上を収容できるスタジアムに来ていたファンは、おそらく数百人だった。
 「これからの国なんだな」
 当時、台湾のスタジアムを観た私は、素直に感じた。日本で例えるのなら、そのクオリティは地方球場に近い。野球をする環境は整ってはいるが、そこにファンを集める、地域に根付かせるような場所にはまだ至っていない。本拠地のエンターテインメント性も、そのレベルに達する投資をしているわけではないのだ。
 ナショナルチームがかつてオリンピックでメダルを獲得し、WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でもそれなりに結果を出すくらい、台湾の野球そのもののレベルは高い。競技に可能性があるのであれば、スタジアムにも同じことが言える。
 それを実際に感じ取れただけ、台湾の野球とスタジアムを観た甲斐があった。

>> see you next week!

 photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 セリーグの球団社長のみなさんを案内した台湾ツアー
#02 台湾のプロ野球に付きまとうイメージと現実
#03 名物のフードはボールパークの魅力をつくる大きな要素
#04 台湾野球のレベルの高さにスタジアムの可能性を感じた

Data

使用チーム 富邦ガーディアンズ
所在地 中華民国台湾新北市新荘区
収容人数 12,300人
竣工 1997年
工費

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