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#04
この自由さこそ
スポーツ本来のあり方
なのかもしれない

 圧巻だったのがゲーム後だ。
 シャークスのファンたちが勝利を喜び、選手を称えようと一斉にフィールドになだれ込む。申し訳程度にスタジアムのスタッフたちが柵を設置しているのもお構いなし。ボールを蹴り、選手たちとツーショットを撮るために奔走する……。
 一帯はまるでカオス。「そりゃあ、天然芝がボロボロになるよな」。そうひとりごちたものの、この自由さこそスポーツ本来のあり方なのかもしれない、とも感じた。
 キングス・パーク・スタジアムを後にし、広大な敷地の駐車場へと向かう。スタジアムのカクテル光線の名残を受けたその場所に設置されたゴールポスト。シャークスの試合の余韻に浸りながら、ボールを蹴っているファン。傍らでは、勝利を祝いバーベキューをしているグループもいた。
 規律。この地を訪れて、日本でいまだ順守されているそれが、無意味なものだと教えられたような気がした。
「ラグビー場にプール?」「ソファなんて置いてどうする」「神聖なフィールドに土足で踏み込むなんて言語道断だ」―― 別に構わないではないか。そこに熱烈なファンがいて、チーム、競技を愛しているのだから。
 帰り際、日本からサンウルブズの応援に来ていた数名のファンの姿を思い出した。完全アウェー。それでも、チームの旗を振り、勝利を願って応援していた。
 彼らの姿が、とても頼もしかった。
 スポーツは、チームは、こういった人たちに支えられている。運営側だけではない。ファンだって独自の、極上のエンターテインメントを作り上げてくれる。
 それを、忘れてはいけない。

>> see you next week!

 photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 日本にはないラグビーへの熱量と選手へのリスペクト
#02 歩みと風情を想起させるレンガ造りの薄暗い道
#03 地元の人々が我が家のように寛ぐスタジアム
#04 この自由さこそスポーツ本来のあり方なのかもしれない
 

Data

使用チーム スーパーラグビー・シャークス
所在地 南アフリカ共和国クワズール・ナタール州エテクウィニ都市圏(ダーバン)
収容人数 52,000人
竣工 1958年
工費

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