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#04
「野球の国」
ドミニカには
夢が詰まっていた

 話題はスタジアムから逸れるが、ウィンターリーグの選手然り、繰り返すようだがドミニカと言えば金の卵の宝庫でもある。だから、メジャーリーグの各球団は、こぞってこの国にアカデミーを設立している。
 日本では、広島東洋カープがいち早くこの地にアカデミーを設立し、トップチームで結果を残す選手が多くあらわれたことで一時、話題になった。メジャーリーグも同様に、サントドミンゴ郊外に各球団がアカデミーを建設し、将来のメジャーリーガー育成に励んでいる。
 ドミニカは土地や物価が安いこともあるのだろうが、その設備はひと言で表現するなら「立派」に尽きる。この時は、最もアカデミーに投資していると言われるピッツバーグ・パイレーツやタンパベイ・レイズなど、数球団の施設を回らせてもらった。見ただけで力の入れようが理解できた。選手宿舎やトレーニングジム、ミーティングルームなどが入る建物は整頓されており、当然のことながらグラウンドも数面用意されている。
 なかでも私の目を引いたのが、食堂に掲示されていた規則だ。<自分の行動に責任を持て>といった生活態度から、<クロックスでは靴下を履け>などの一般マナーが書かれてある。
 元は野球選手だった現地の運転手の話によると、このアカデミーには中南米から多くの野球少年がトライアウトを受けに来るという。合格すれば球団から費用を出してもらえ、学校にも通わせてくれるそうだ。だから、この国の貧しい子供たちは、将来的にアメリカンドリームを掴むべく、アカデミーに入ることを第一目標としている。「野球の国」ドミニカには夢が詰まっている。
 ソーサ選手とブランコ選手を招待し、レストランで慰労会を開いた。現地のお米に鶏料理、マッシュしたイモを揚げた豚の皮で包んだドミニカの伝統料理モフォンゴを食べながら、みんなでシーズンを振り返り、「来年も契約したい」と球団の意志を伝えた。
 彼らは日本で夢を叶えた。それと同時に、また、ベイスターズにも夢を与えてくれるのだろう――私は、そんな想いを馳せていた。

> see you next week!

photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 メジャーリーグのスーパースターを輩出する野球先進国へ
#02 日本と違い物騒な雰囲気漂うドミニカの路地裏
#03 金の卵たちのプレーにビールを飲みながら一喜一憂する
#04 「野球の国」ドミニカには夢が詰まっていた

Data

使用チーム ティグレス・デル・リセイ(LIDOM)、レオネス・デル・エスコヒード(LIDOM)
所在地 ドミニカ共和国サントドミンゴ北部
収容人数 16,500人
竣工 1955年
工費 RD$ 3,500,000

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