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#01
ボールパークとは
人をワクワクさせる
場所でなければならない

 AT&Tパークに「クレイジー・クラブズ」というフードショップがある。
 目玉商品はクレイジー・クラブ・サンドイッチ。香ばしく焼き上げられたガーリックトーストからはみ出さんばかりに、カニやトマトなどを挟み込む。店名を冠した名物は17ドルと高い。それでも、スタジアムが開場するとファンが店に押しかけ行列ができるわけだが、並んでも食べるだけの価値はある。
 美味は、それだけではない。
 ニンニクのすり身をふんだんにまぶした、「ギルロイ・ガーリックフライ」のポテトフライ。サワーブレッドにバターやチーズがぎっしり入った「チャウダー・ハウス」のクラムチャウダーは、サンフランシスコの冷えた夜にはうれしい逸品である。
 アメリカ全体では、どちらかと言えば食に対する意識が鈍感な部分がある。しかし、流行を発信する大都市は別だ。ニューヨークやカルフォルニアもそうだし、ここサンフランシスコも観光地として名高い漁港「フィッシャーマンズ・ワーフ」があるだけに、食、とりわけシーフードにはうるさい。そのこだわりがボールパークにも反映されているのだとしても、何ら不思議ではない。
 日本のスタジアムにも言えることだが、ボールパークのフードはどれも値が張る。
 「そこでしか食べ物を買えない」など選択肢が限られていることもあって、強気な値段を設定できることもある。だからこそ、ファンの目はシビアにもなる。
 「ここに来てよかった」「楽しい場所だった」。
 心から満足する。その対価として、チケットやフードに高いお金を払うのである。
 ボールパークとは、人をワクワクさせる場所でなければならない。AT&Tパークに訪れた私は、そのことを再確認した。

>> to be continued

photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 ボールパークとは人をワクワクさせる場所でなければならない
#02 子供たちの心を掴む巨大なオブジェのインパクト
#03 最大の名物は海に落ちるスプラッシュ・ヒット
#04 アメリカ人の愛情が身に染みる港町のボールパーク

Data

使用チーム サンフランシスコ・ジャイアンツ
所在地 アメリカ合衆国カリフォルニア州サンフランシスコ
収容人数 41,503人
竣工 2000年
工費 3億5700万ドル

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