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#01
巨大な
カラオケボックス
のように重なり合う音

 アリーナの観衆がステージを囲む。
 ローリングストーン誌が「ロックンロールそのものだ」と認めた、アメリカ人のロックの魂がギターでメロディーを奏でる。『明日なき暴走』『ハングリー・ハート』。往年の名曲に身を委ね、心を震わせながら人々は大合唱する。
 トーキング・スティック・リゾート・アリーナは、さながら巨大なカラオケボックスのように音が重なり合っていた。
 ようやく、ライブを観ることができた。
 “BOSS”の愛称で親しまれているブルース・スプリングスティーンの生の歌声を全身で感じられる機会に恵まれた。
 この地を訪れたのは2015年。横浜DeNAベイスターズの社長だった私は、アリゾナ・ダイヤモンドバックスのホーム、チェイス・フィールドの視察を行っていた。そこからマイアミやシアトルなどをめぐる予定だったため、決して時間があったわけではないし、本業を疎かにしたくはなかった。
 だが、幸運にも視察と同時期に、私が愛してやまないブルース・スプリングスティーンのライブが近隣で開催されるとなれば、どうしても観たかった。何より、「ハマスタ(横浜スタジアム)や横浜文化体育館を含め、関内の街を“音楽の聖地”にしたい」と壮大な目標を抱いていた私にとって、この偉大なミュージシャンのライブに触れることは決してお遊びではなかったのだ。

to be continued


photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 巨大なカラオケボックスのように重なり合う音
#02 この場所にいたものにしか得られない一体感と興奮
#03 音源を記録することは、そこが“音楽の聖地”である証だ
#04 いつしかハマスタとリンクしていたBOSSの歌声

Data

使用チーム フェニックス・サンズ 
所在地 アメリカ合衆国アリゾナ州フェニックス
収容人数 18,422人
竣工 1992年
工費 6,700万ドル、9,000万ドル (2001-04 改修時)

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