#05
街を愛する人たちが
築き上げた
世界に誇るイベント
選ばれしメジャーリーガーたちが市街地に敷き詰められたレッドカーペットの上をパレードし、各球団のマスコットがお祭りに花を添える――。
メジャーリーグにとってオールスターゲームが一大イベントであるということは以前から知っていた。ただ、実際にその期間、その街に居ると、あらためてそのスケールの大きさに驚かされた。カンザスシティの中心部にあるコンベンションセンターでの催しもそのひとつだった。
会場では大規模なオークションが開催され、往年の名選手たちのトークショーが行われる。他にも、オールスターゲームにまつわる展示スペース、マイナーリーグを含めた全球団のベースボールキャップが飾られるなど、その内容は、すべての野球ファンを対象としている。バッティング、ピッチング、守備が楽しめる野球少年のための施設も完備され、まさしく、大規模なベースボールファンフェスタと言ってもいい。
もちろん、私はこのイベントから「横浜スタジアムにも何か取り入れられる要素はないか」と考えた。例えば、カンザスシティの会場の外に並べられた自動車には、バドワイザーなど各球団のスポンサーとなっている企業のロゴがペイントされてあった。そこからヒントを得て実現させたのが、3回と6回にプレゼントの入ったバズーカをスタンドに打ち込む「ベイスターズ・スーパー・バズーカ」を走らせる自動車のデザインだ。
実際の試合でも、アメリカのスポーツ文化、オールスターゲームのスケール感。そのすべてが、私にとっては素晴らしい教材となった。
カウフマン・スタジアムのフィールドを埋め尽くさんばかりのアメリカ国旗。スタンドでは、観客用に紺、赤、白のTシャツが配布されそれを着たファンを遠くから見れば巨大な国旗となる――。その演出に触れ「横浜スタジアムのライトスタンドにも大きな旗を作ろう」と実現したのが、「I ☆(LOVE) YOKOHAMA」のフラッグだった。
街を愛する人たちがひとつの場所でつながり、世界に誇れる存在を築き上げる――。その精神は、メジャーリーグのオールスターゲームを通じて、私の揺るぎない信念となった。
photo:Jun Ikeda
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Data
使用チーム | カンザスシティ・ロイヤルズ |
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所在地 | アメリカ合衆国ミズーリ州カンザスシティ |
収容人数 | 37,903人 |
竣工 | 1973年 |
工費 | 7000万ドル |