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#01
視察の旅は、
長距離移動という
過酷な戦いでもある

 アメリカのボールパークを視察する。
 横浜DeNAベイスターズの社長だった当時の私は、訪れたスタジアムから少しでも参考となるエキスを吸収したいと意欲的だった。
 とはいえ、私も人間である。視察するごとに同じ感情で動けるわけではない。
 視察の旅。それは同時に、長距離移動という過酷なスケジュールとの戦いでもあった。
 横浜スタジアムの社長を務められていた、故・鶴岡博さんたちとアメリカに渡った2014年は、とりわけハードだった。
 記憶を手繰り寄せる。
 あの年は確か、メンフィスからスタートしたはずだった。マイナーリーグの「オートゾーン・パーク」を視察したあとに、エルビス・プレスリーが長年住んでいた大邸宅「グレースランド」を見学するなど、最初はそれなりに旅も楽しめていたとは思う。
 だが、そこからは視察と移動の繰り返しだった。
 専用ドライバーに車を運転してもらったとはいえ、基本的にはハイウェイをひたすら走るのみ。食事はハイウェイの出口や入口近くのファストフードで済ませていたくらいだ。オハイオでシンシナティ・レッズのグレート・アメリカン・ボールパーク、ペンシルベニアでピッツバーグ・パイレーツのPNCパークと、もともと「見てみたい」と思っていたスタジアムを視察することができたのは大きな収穫だった。それでも「スタジアムを観させてもらった。よし、次の場所に向かおう」といった強行スケジュールには、否応なしに体力が削られていく。
 こうしてたどり着いたボールパークが、ニューヨーク州バッファローにある、コカ・コーラ・フィールドだった。

>> to be continued

photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 視察の旅は、長距離移動という過酷な戦いでもある
#02 チーム愛を感じさせるバッファローのヤード表記
#03 マイナーリーグのスタジアムとは思えないクオリティ
#04 自然が生み出す絶景を眺めながら考えたこと

Data

使用チーム バッフォロー・バイソンズ
所在地 アメリカ合衆国ニューヨーク州
収容人数 18,025人
竣工 1988年
工費 4,200万ドル

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