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#03
歴史の深さと
地元の人たちの
関心度の高さを知る

 ローズボウルの外周を歩いても、地元の人たちの熱が感じられる。
 スタジアムの周りに貼られたタイルには、様々な名前が彫られている。ローズボウルの支援者たちだ。と言っても、ほとんどが市民である。お金を払い、その証明にレプリカのタイルをもらう。父や祖父、家族代々ローズボウルを愛している証は、彼らにとってその街で暮らしている誇りでもある。
 このときの私は横浜DeNAベイスターズの社長を退く時期だったため、実現するためのアクションを起こせなかったのだが、「スタジアムにファンの名を刻む」というシステムにはものすごく惹かれた。
 ベイスターズのみならず、日本の場合、ファンクラブに入会する大きな理由は、「チケットを購入しやすいから」だ。その他にも、「限定グッズ」など特典が入手できることもあるだろう。要するに見返りを前提としてファンクラブに加入するわけだ。ファンを拡大し、観客動員数を増やして球団に多くの収益をもたらすためには必要なことなのかもしれない。
 だが、もっと地元のチームに誇りを持ってほしい。もっと純粋に、いつも愛して欲しい。みんなにステークホルダー、関係者、になってもらいたい。「ベイスターズなら、横浜のプロ野球のスタジアムなら、どんなに弱くても、どんなに古くても、俺は、私は支え続けるよ」。そう心から支えてくれるファンを、ひとりでも増やしたい。そのために、私は数々のボールパークを視察し、どんなに細かいアイデアもチームや横浜スタジアムなどに反映してきたつもりだ。ファンクラブの向こう側へ――純粋に地域のアイコンとして支えてくれる、ハマスタのタイルに家族代々の名前が刻まれることへのステータス。誇り。そんな会員組織を築き上げたかった。
 そのような感慨にふけながらフィールドに向かう。ホンダをはじめとする「スポンサーゲート」をくぐりながら、ローズボウルの歴史の深さと関心度の高さを知る。

>> to be continued

photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 様々な夢を抱き熱狂してきた歴史ある場所
#02 サプライズは、地域に根付くテールゲート・パーティ
#03 歴史の深さと地元の人たちの関心度の高さを知る
#04 秘めているのは課題ではなく可能性だ
 

Data

使用チーム ローズボウル (NCAA) 
所在地 アメリカ合衆国カリフォルニア州パサデナ
収容人数 92.542人
竣工 1922年
工費 272,198ドル

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