#03
心突き動かされた
ベルリンの
ライフスタイルショップ
ベルリンからベイスターズに還元された〝エキス〟は、ビールだけではない。
視察に訪れる前から、ベルリンは「洗練された街」だと聞いていた。そこで私は、この直前にオープンしたばかりのグッズショップ『+B』に参考となる要素を求めてもいた。
+Bのコンセプトは「生活にベースボールをプラスする」だ。ベイスターズのみならず、もっとターゲットを広くし、「野球のファン」「野球に興味ある人」「横浜に観光に来た人のお土産」などのニーズに応える。そんな日常生活を提案したグッズを揃えていた。オープン当初は、他球団の上層部の方々などから、「さすがに挑戦しすぎではないか? ターゲットを広くしすぎて、売れないのではないか?」とまで言われていた。しかし私は、野球のエッセンス、その匂いが感じられる商品、アパレル、日用雑貨などを、ものすごくおしゃれに、それこそビームスやユナイテッドアローズのような質まで高めれば、マーケットは必ず確保できると考えていた。
そう考えていた私の心を突き動かしたショップが、ベルリンにあった。
「ゲシュタルテン」。アートブックなどを手掛ける、ドイツでも有名な出版社が運営するブックショップは、書籍はもとより文具やコーヒーカップなどの雑貨と、幅広い商品ラインナップを誇るライフスタイルショップのように思えた。店内も白と木目を基調とした落ち着いた雰囲気。ショップが醸し出す温もりが、空間を包む。
ゲシュタルテンで私が感銘を受けたのは、商品の陳列だ。ビールや列車のアートブックが、まるで絵画のように壁に並んでいる。売り物でありオブジェ。日常に自然と溶け込む演出。+Bにとって、これ以上のお手本はなかった。
余談になるが、私がベイスターズの代表時代に出版した、『BALLPARK』(ダイヤモンド社刊)というメッセージフォトブックがある。横浜スタジアムを買収し一体経営に成功したタイミングで、それまで視察し感銘を受けたアメリカのボールパークの大好きなエッセンス。それを、私の友人であるカメラマンに撮影してもらい、ハマスタのコミュニティボールパークの未来予想図のCGにまで仕上げた、あらゆる写真が掲載されている一冊だ。これを、ゲシュタルテンからヒントを得て制作に着手した。さらには、「ベイスターズのビールでも、『世界中のスタジアムとボールパークのビール』を題したら面白い本ができるかも」と閃いたりもした。実現こそしなかったが、ここにいるとアイデアがどんどん湧いてくるような気がした。
photo:Jun Ikeda
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Data
使用チーム | ヘルタ・ベルリナー・シュポルト・クラップ・ベルリン |
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所在地 | ドイツ連邦共和国ベルリン |
収容人数 | 74.475人 |
竣工 | 1936年(2004年改修) |
工費 | 4.200万マルク(改修費2億4200万€) |