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#03
臨場感のある
サウンドを
ファンに提供する

 スタジアムのこだわりは、野球を観戦していても十分に感じ取ることができる。
 本来のダイヤモンド型のスタジアムとは一線を画し、長方形と独特の形状ではあるが、ここはその特性を存分に生かしている。大型ビジョンやその周辺を彩るスポンサーの広告、外野スタンドのほとんどがライトに集中しているのだが、全く違和感を覚えない。
 ビジョンと言えば、ミニッツメイド・パークで採用している出場選手の打撃成績。スコアブックのように表示する手法を、横浜スタジアムでも導入させてもらったのを想い出す。
 なにより、音響が素晴らしい。
 レイド氏はスタジアムで表現する音に強いこだわりがあり、「どのエリアにいても、臨場感のあるサウンドをファンに提供したい」と言っていた。スタジアムで奏でられる音に耳を傾ければ、その質の高さがわっかりと分かる。「これだ」と、私は思った。
 当時の横浜スタジアムの音響は、お世辞にも良質とは言えなかった。例えば、選手のヒーローインタビュー。お立ち台に上がった選手は、球場に足を運んでくれたファンのために、できる限りのマイクパフォーマンスで盛り上げてくれるのだが、いかんせんディレーがひどかった。それは、私が球団社長に就いてからずっと懸念していたことでもあった。
 「サウンドは、ボールパークに欠かせない演出のひとつだ」と感じていた私は、有名アーティストの音響を担当している方に助言してもらうなど、環境を整えようと試みた。しかし、結局、資金面で折り合いがつかず実現しなかった。今でも心残りだ。

>> to be continued

 photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 スタジアムを案内してくれたレジェンドの息子
#02 ロッカールームで感じたアメリカのユーモア
#03 臨場感のあるサウンドをファンに提供する
#04 プレーヤーを後押しする多彩な個性
 

Data

使用チーム ヒューストン・アストロズ
所在地 アメリカ合衆国テキサス州ヒューストン
収容人数 41,168人 
竣工 2000年
工費 2億5000万ドル

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