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#01
一軍同様に魅力ある
ボールパークを
造りたい

 横浜DeNAベイスターズの社長時代、私は大きな違和感と向き合いながら、それを改善するために動いてきた。
「横浜市民に、そして神奈川県民すべてに愛される球団を目指す以上は、『ボールパーク化構想』を一軍だけのものにしちゃダメだ」
 ベイスターズの二軍施設も、一軍同様に魅力あるボールパークにしたいと、社長となった当初からずっと考えていたのだ。
 横須賀市長浦町に構えているベイスターズの二軍練習場は、1986年、球団を保有していた大洋漁業(現マルハニチロ)の施設跡地に造られたわけだが、老朽化が進行しており、なおかつグラウンドには観客席もほとんどない。近隣に住宅があることからも、ファームの公式試合を開催するには困難な環境だった。したがって、これまでベイスターズは同市の追浜公園内にある横須賀スタジアムをホームとしてきたわけだが、試合後にバスで移動して長浦の施設に戻り練習するとなると効率が悪い。そして何より、このサイクルでは二軍の「ボールパーク化構想」は一向に進展しない。
 だから私は、年に1度、神奈川県の各市を訪問し、ベイスターズ二軍の本拠地を受け入れてくれるような場所はないか、あちこち探し続けてきた。そして2016年、横須賀市と協定を結べることとなり、これまで二軍の主催試合を開催してきた横須賀スタジアムを本拠地とし、追浜公園全体を二軍の新たなボールパークとして誕生させることが決まった。
 当時は数多くのメディアに取り上げていただき、そこで私は、おそらくこんなことを記者のみなさんに述べたと思う。
「10年後や20年後、地域の人たちや選手たちが『ベイスターズが根付いたいい街だ』と思ってもらえるような場所にしたい」
 そのために、私は当然のように参考となる場所への視察を開始した。
 訪れた場所は韓国。
 首都ソウルから高速道路で南東のほうへ向かう。途中、LINEの親会社であるNAVERの本社を発見し「ここにあるんだな」と思いながら車を走らせると、視界に移る光景は徐々に郊外らしい街並みへと変化していく。言ってしまえば田舎。
「二軍の施設があるような場所は、日本も韓国も同じなんだろうな」。何気なく思考を巡らせていると、京畿道の利川市という街に到着した。

>> to be continued

  photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 一軍同様に魅力あるボールパークをつくりたい
#02 メジャーリーグのスプリング・キャンプ地を思わせる整備
#03 ストレスなく野球に打ち込むための最適な場所
#04 いいものはいいと認め、余すことなく導入すること

Data

使用チーム LGツインズ(ファーム施設)
所在地 大韓民国京畿道利川市
収容人数 852人
竣工 2014年
工費 1,000億ウォン

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