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#03
キューバの海のような
透き通った青が
私の視覚を癒す

 以前から現地に派遣していた球団スタッフに、「選手のレベルは高い」とは聞いていた。選手の評価は専門家に任せるとして、私の役目は、キューバで一番優れたプレーヤーの獲得を実現させること。そのために野球界のトップ、そのパイプ役とも言えるキーマンとの関係を築くことだった。
 幸運にも、政府高官や野球連盟の幹部たちとも友好的な交渉ができたことで、「もう一度、来てくれ。それまでに、こちらも選手をリストアップしておく」と手応えを得ることができた。そして、間もなく再訪したキューバで獲得に成功した選手こそ、「キューバの至宝」と呼ばれるユリエスキ・グリエル選手だったわけだ。
 目的は選手の獲得だった。ただ、国家政策とも言われる野球を、スタジアムの雰囲気を肌で感じなければ意味がない。私は、キューバで有名なエスタディオ・ラティーノ・アメリカーノへ向かうことにした。
 道中、かの有名なピュリツァー賞作家、アーネスト・ヘミングウェイが愛したバー「ラ・ボデギータ・デル・メディオ」でモヒートを飲む。また、学生時代を思い出す。やはり、本場の味は違う。身に染みる。
 私が訪れた3年後、ラウル・カストロ国家評議会議長とアメリカのバラク・オバマ大統領が、キューバ代表とタンパベイ・レイズの親善試合を観戦し話題となるこのスタジアムは、スタンドからそそり立つ照明塔まで、すべてがブルーで統一されていた。70年近く前に建てられたと言われているが、キューバの海を想起させる透き通った青が私の視覚を癒してくれる。

to be continued

photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 キューバ音楽に興味を持った大学生の頃
#02 憧憬に駆られながら街を駆け抜けたキューバの地
#03 キューバの海のような透き通った青が私の視覚を癒す
#04 人々の生活と同じように装いを変えていくスタジアム

Data

使用チーム レオネス・デ・インダストリアレス(CNS)
所在地 キューバ共和国ハバナ
収容人数 55,000人
竣工 1946年
工費 約200万ドル

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