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#02
チームの歴史が
ボールパークを
成り立たせる

 「まさか、野球界に携わる人間として、ここに来るなんて思わなかった」
 2013年。横浜DeNAベイスターズの社長として、当時、横浜スタジアムの社長を務められていた故・鶴岡博さんとこの地を視察に訪れた私は、そうひとりごちたものである。
 1962年に誕生した歴史あるスタジアムは、5万6000人という、メジャーリーグでも屈指の収容規模を誇る。95年に私が観戦した4階席のトップデッキ、3階席のシートからもダウンタウンなどロサンゼルスの街並みを見渡せるのは、丘陵地ならではの特権だ。
 その他にも、バックネット裏やフィールドを間近に見られるボックス席と、その広さを有効活用した多彩のシートが用意されている。といっても、全体的にチームカラーの「ドジャーブルー」を強調してはいるものの、1階と2階席を占める、淡いイエローとのバランスは絶妙とは言い難い。
 正直な印象を述べれば、私はドジャー・スタジアムに少々物足りなさを感じた。
 スタジアムの形状は、メジャーリーグでは珍しいシンメトリー。それに合わせるかのように、レフトとライトスタンド上段に設置されたビジョンは印象的だったし、センターに立つ巨大スピーカーも存在感を放ってはいる。1階からトップデッキまで中央にそびえる、ドジャースのロゴマークをあしらった塔のような建物もインパクトがあった。食べ物にしても、「世界で最も有名なホットドック」とも言われるドジャードッグなど、ここから名物も発信できている。
 ロサンゼルスの人たちはドジャースを愛している。球場に行けば熱気もそれなりに感じられる。悪い球場ではないのだ――そんなことを考えながら視察をしていて、ふと思った。「スタジアムそのものではなく、チームの歴史があってこのボールパークは成り立っているのではないか」と。

>> to be continued

photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 記憶に残る初めてのドジャー・スタジアム
#02 チームの歴史がボールパークを成り立たせる
#03 ボールパークに足を運ぶという日常がある
#04 WBC決勝を観戦して知った本場の認知度
 

Data

使用チーム ロサンゼルス・ドジャース
所在地 アメリカ合衆国カリフォルニア州
収容人数 56,000人
竣工 1962年
工費 2,300万ドル

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