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#02
カラー・
コミュニケーション
という新たな概念

 街の息吹、古き良き建造物を活かしたカムデン・ヤーズは、メジャーリーグのスタジアムで初めて新古典主義を導入したとも言われている。いわば、「レトロ調ボールパーク」の先駆けとも言える存在だ。
 レンガと鉄骨を組み合わせた外観。フィールドに足を踏み入れれば、ホームベース裏、バックスタンドのフェンスが極端に低く、外野のサイズはレフトとライトが左右非対称。シートは昔ながらの濃いグリーンが基調とされている。言葉だけを並べればレトロ感が強調されるかもしれないが、実際にはそうではない。この地を訪ねれば、きっと誰もが感じるはずである。カムデン・ヤーズは原点回帰を試みながらも、斬新で画期的なアイデアがふんだんに盛り込まれたボールパークである――と。
 それを如実に物語っているのが、球団のイメージカラーでもあるオレンジだろう。当時、カムデン・ヤーズの女性責任者が「カラー・コミュニケーション」という新たな概念を打ち出したことが、アメリカのボールパークに大きな衝撃を与えた。私自身、カムデン・ヤーズのオレンジに圧倒され、「ハマスタ(横浜スタジアム)にもチームカラーを浸透させよう」と決意したものである。
 そうして、横浜スタジアムの“巨人カラー”(オレンジ)だったスタンドを、“横浜ブルー”に変えていくことを推し進めることとなった。最初は球場の資金面の関係で、外野席だけがブルーのシートだった。そこから年々増やし、私が社長を退任後の2017年に全席ブルーとなった。
 「カラー・コミュニケーション」の概念をカムデン・ヤーズで学んだとともに、「常にお客さんを球場内で動かしていこう」と、新しい要素を少しずつ、ハマスタ仕様に実現させることができた。

>> to be continued

photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 街の歴史を具現化させたボールパーク
#02 カラー・コミュニケーションという新たな概念
#03 アニメ風にデザインされた球団キャラクター
#04 ボールパークがボルチモアに活気を与えた
 

Data

使用チーム ボルチモア・オリオールズ 
所在地  アメリカ合衆国メリーランド州ボルチモア
収容人数  45,971人
竣工  1992年
工費  1億1000万ドル

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