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#04
ベースボールを通じて
地域との
コミュニティを育む

 独立リーグらしい演出と言えば、試合中にも関わらず監督がダックスクラブに突然現れ、ファンと交流していたことだ。「誰が采配を振るうのか?」と疑問に思ったものだが、独立リーグは選手のキャリアアップの場所であり、言うなれば勝敗は度外視しているのかもしれない。地元に愛されるチームを――その姿勢が、このようなあり得ないファンサービスを実現させているのだろう。

 「ここは、ベースボールを通じて地域のコミュニティを育んでいる場所なんだ」

 私は瞬時にそれを感じ取った。同行してくれた鶴岡さんと、ビールを片手に「地域のコミュニティってやっぱり大事なんですね。みんなが、そこで楽しめるようにしないといけませんね」と語り合ったものである。鶴岡さんも何度も頷き、熱心にベスページ・ボールパークを一緒に視察して、そこで地元のコミュニティに溶け込み、我々も、まだ東京のIT会社から来た新参者の浜っ子ベイスターズ社長と、少しづつ打ち砕け、ビールやワインを飲みながら、野球をつまみに、ボールパークを一緒に楽しんでくれたのがうれしかった。
 横浜スタジアム内部にも「カフェ・ビクトリーコート」というレストランがある。窓からは球場の外側しか見られない場所だったため、「ここを何とかしないと」と思案していた。しかし、ベスページ・ボールパークから影響を受けた私は、「ここをコミュニティの場所にしよう」とプラスに考えられた。この発想の転換は大きな収穫だった。
 ベスページ・ボールパークの視察が、後に横浜DeNAベイスターズと横浜スタジアムがタッグを組んで走り出す、「コミュニティボールパーク化構想」の幕開けとなった。
 ダックスのスタジアムで、鶴岡さんと二人で首からダックス人形をぶらさげて、「ハマスタをコミュニティボールパークにしよう!」と、ふたりで盛り上がったのが、すべてのきっかけだった。私にとっても、ハマスタにとっても、ベイスターズファンにとっても、ひとつの大きなきっかけになったボールパークである。
 都市部から離れた独立リーグのチームが、こんなにも地元から愛されている。ベスページ・ボールパークがロングアイランドのコミュニティを築き、ロングアイランドに住む人たちがその輪を広げる――。

 「ハマスタも、いつか必ず、ここみたいな地元に愛されるスタジアムにしたい」

 最初の視察で私に大きな影響を与えてくれたスタジアム。滅多にグッズを買わない私は、鶴岡さんとふたりでダックスの手長人形を購入し、そう誓ったのである。

>> see you next week!

 photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 忘れることができないボールパーク
#02 スタジアムと見事に融合した企業広告
#03 確立された奇をてらわないファンサービス
#04 ベースボールを通じて地域とのコミュニティを育む
 

Data

使用チーム  ロングアイランド・ダックス
所在地  アメリカ合衆国ニューヨーク州
収容人数  6,002人
竣工  2000年
工費  —

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