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#05
ワールドカップを
観戦しながら
想いを傾けたこと

 試合は残念ながら、本田圭佑選手のゴールで日本が先取点を挙げたものの、終盤にコートジボワールに逆転され、敗れた。私はこの試合とアレーナ・ペルナンブーコを眺めながら、こんなことに想いを傾けていた。
 近年、ヨーロッパの強豪クラブのスタジアムにも、ここのようなホスピタリティルームが続々とつくられているらしい。革新が進んでいるのは喜ばしいことではあるが、それだけではダメだ。野球場のように、多種多様なシートを設けてもいいのではないか――と。
 サッカーのスタジアムとは、ピッチの近さ、プレーの見やすさを重視する傾向がある。イニング間など小休止が多い野球と違って、サッカーはハーフタイムを除けば試合はノンストップで続く。
 だから、競技を見せることを最優先に考えているのかもしれないが、ファンのなかには「ゆっくり試合を観たい」「なんで、ずっと立っていなきゃいけなんだ?」と怪訝に思う人だっているだろう。
 観衆全員が熱狂的なサポーターではない。贔屓のクラブでなくとも、ただ純粋にサッカーを満喫したいファンだっているはずなのだ。だったら、ボックス席を設けてもいいだろうし、なんなら、ラグビーのキングス・パーク・スタジアムのように、ソファ席などを作ったっていい。
 スタジアムもまた、チームの「顔」である。ファンから「楽しかったね。また来ようね」と言ってもらえるスタジアムにするために、「個性を出さないでどうするの?」と、私なんかは考えてしまう。
 そのことはさておき、ブラジルワールドカップの旅は、とても有意義だった。

>> to be continued


 photo:Jun Ikeda

This week’s articles
#01 海外にスポーツを観に行くという「旅」がある
#02 ワールドカップの試合観戦を前に堪能したもの
#03 興奮のるつぼと化した〝カナリア〟がスタジアムを彩る
#04 鮮やかにライトアップされた白を基調とした清潔感
#05 ワールドカップを観戦しながら想いを傾けたこと
#06 サッカーの熱狂と興奮とともに記憶に残る幸福感
 

Data

使用チーム クルーベ・ナウチコ・カピバリベ
所在地 ブラジル連邦共和国ペルナンブーコ州レシフェ
収容人数 46,154人
竣工 2013年
工費

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